本と屯

神奈川は三浦半島の南端に、三崎という港町があります。

京急線三崎口駅からバスで15分の「三崎港」で降りるとそこには、ちらちら光る波のさざめく港がひろがっていて、ぴゅ〜と海風が吹いてくる。この三崎というまちに、ミネシンゴさんとかよこさんご夫婦による出版社・アタシ社が営む蔵書室「本と屯」はあります。

 

おふたりの編む本が大好きで、「本と屯」を目指してはじめて三崎を訪れたのが去年の夏。三崎のバス停で降りたとき、東京のうだる暑さに疲れていた身体にからっと気持ちよい港の風が吹き込み、海辺に立つと、かつてしばらく暮らした八重山の島々が思い出されて、懐かしくもせつない気持ちになったことを覚えています。

商店街に足を踏み入れてほどなく「本と屯」にたどり着き、なかにはいった瞬間、心がわさっと震えました。棚やいたるところにひしめく本、土間でくつろぐまちの子どもや大人、そこにいるひと皆がそれぞれに居心地よさそうに自由な時間を過ごしていて、私は何だか夏休みのある小学校時代にかえったような気分でした。

 

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(夏、かよこさんと/たまたまふたりとも青いワンピース)

 

これまでめぐり会ったひとや場所に対して、「何故だか分からないけれど、自分にとってものすごく大切なものがあるような気がする」という漠たる思いを幾度か抱いたことがありますが、「本と屯」に対してもそう。そこにあるであろう「大切な何か」を見いだすべく、自然と感性が研ぎ澄まされていく感覚があります。静かな森に足を踏みいれたときのような。

 

秋、冬、そして春、期間をあけて何度か足を運ぶたび、三崎の景色は表情を変え、ただ揺れる波を見ているだけで胸がいっぱいになった日もありました。今年はどんな景色が見れるでしょうか。とても楽しみです。

 

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(「本と屯」で仲良くなった女の子(写真三枚目)がとてもきれいに皆の写真を撮ってくれました、すごい)